PARLARE CON LE MANI
イル ビゾンテのものづくり

イル ビゾンテの創業者、ワニー・ディ・フィリッポ。
彼のプライベート空間から、ナチュラルレザーが生み出される皮なめし工場、熟練の職人が揃う工房まで、イル ビゾンテの徹底したものづくりをご紹介します。

イタリアのアール・ヌーヴォー期であるリベルティの時代に建てられたこの家は周囲に約5ヘクタールほどのオリーブやブドウ畑が立ち並び、テラスからはのどかで美しい風景が一望できます。

以前は農家だったこの家は、ワニーによって改築、改装され、今や世界中のインテリア誌が取材に集まる個性的な邸宅に。イナやペルラと名付けられたポニーは、元々は農作業の為に飼われていましたが、今はこの庭でゆったりと草を食む日々を送っています。

イル ビゾンテの創業者、ワニー・ディ・フィリッポ。
彼のプライベート空間から、ナチュラルレザーが生み出される皮なめし工場、熟練の職人が揃う工房まで、イル ビゾンテの徹底したものづくりをご紹介します。


イタリアのアール・ヌーヴォー期であるリベルティの時代に建てられたこの家は周囲に約5ヘクタールほどのオリーブやブドウ畑が立ち並び、テラスからはのどかで美しい風景が一望できます。

以前は農家だったこの家は、ワニーによって改築、改装され、今や世界中のインテリア誌が取材に集まる個性的な邸宅に。イナやペルラと名付けられたポニーは、元々は農作業の為に飼われていましたが、今はこの庭でゆったりと草を食む日々を送っています。

この邸宅の部屋には、「当時の雰囲気を極力残したい」と考える彼が、世界中で集めてきたコレクションアイテムが所狭しと並んでいます。

世界中を飛び回る多忙な日々から帰宅した際、家ですることといえば第一にビリヤードなのだとか。「高価なものを持つより、健康で楽しい一時を家族や友だちと過ごすのが本当の人間の豊かさ」と語る彼。家族や友人と何気ない時間を過ごすなど、素朴で心の通うコミュニケーションに真の豊かさがあると考えています。

「なんでも、コレクションするのが好きなんだ」と語る彼のセンスは、1800年代から1900年代の絵画を中心に、古い時代の生活用品や1000点以上に及ぶリベルティスタイルのガラス細工など、多岐に渡る収集物に現れています。

先に述べたビリヤード台のように、それぞれの収集物は今も現役のものとして使用されています。機能性や美しさに着目する彼の哲学が隅々まで浸透しているこの家のすべてが彼の大切な”コレクション”なのです。

ワニーが「イル ビゾンテのバッグの命」と言ってはばからない、最も重要な革の品質を支えるのが、トスカーナにあるサンタ・クローチェ地区の皮なめし工場。イタリアを始めとした世界中のトップ・メーカーに革を届ける、折り紙つきのクオリティを持つこの工場は創業者の孫である現オーナーと、その子供たち が経営しています。

このサンタ・クローチェの工場は、染料であるタンニンが採れることから、古くから革の名産地として有名でした。植物から抽出した染料だけを使用しており、彼がポリシーとしている「完全自然由来のなめし革」を実現させることのできるこだわりのある工場です。

また、原材料にもこわだり、ヨーロッパ産の食用牛の背中部分だけを使用することや、生後6ヶ月〜2年までの原皮を使用するなど、厳しい基準が設けられています。この基準をくぐり抜けた高品質な革だけが、イル ビゾンテの製品へと生まれ変わるのです。

ワニーが覗き込むのは、工場オーナーと二人三脚で新しいマテリアルを作るための小さなタンク。

  • A:
  • 貴重な原材料となる肉を剥いだ牛の革は、塩漬けにして工場に送られ、夏場は冷蔵庫の中で大事に保存されます。

  • B:
  • 一度に最大7000枚ほどの革を、タンクで回し続け、洗浄します。

  • C:
  • 3日間洗って皮膚が開いた革は、その後20時間ほど染料タンクの中で染めあげます。

  • D:
  • タンニンで染色した革。タンクから出し、オイル加工を施します。

  • E:
  • オイルを処理する際に使われる植物性の油

  • F:
  • 一定の湿度に保たれた乾燥用ルームに2,3日間吊るされ、その後クオリティチェックに回されます。念入りにチェックされた革は、大きさを測り、形状をスキャンしてコンピュータに記憶。
    革の完成後、さらに1,2 ヶ月ほど革を寝かせ出荷となります。

フィレンツェ郊外のポンタッシエーベにあるイル ビゾンテの本社には、工場も併設されていますが、ここでは主にプロトタイプの制作や商品管理がメインで行われており、製品は本社近くに点在している20近い工場で生産されています。

仕事を請け負う関係ではあるものの、工場には熟練した革職人ばかりが揃う、それは特別な工場なのです。

セロッティ・シルヴァーナ工場では、最低7,8年以上の経験を積んだベテランの職員が5人、仕事に従事しています。この工場のオーナーであるヴァスコ氏 [ 写真 : 上 ] はイル ビゾンテ本社工場でも働いていたことがあり、ワニー氏とは40年以上もの付き合いになる間柄。ファミリー経営の工場で、ヴァスコ氏以外は全員女性というアットホームな空気の仕事場です。

イル ビゾンテのものづくりは、工場との”二人三脚”が基本。本社に併設された工場でまずデザインをパターンに落とし込み、プロトタイプが作られます。その後、パーツをパッケージにしたものがヴァスコ氏の工場をはじめとした下請け工場に送られます。3度にわたる厳密なチェックが行われた後に梱包され、世界中へ出荷されます。

ヴァスコ氏が、「デコレーションで勝負せず、シンプルでありながらクオリティの高い美しいものづくりを目指しています」と語るように、この工場では大きなバッグなら1日に10個生産するのが限度。しかし、その生産量は丁寧な手仕事、そしてクオリティの高さを伺わせるヴァスコ氏の”自慢”でもあります。

イル ビゾンテは、ものづくりの過程で少しユニークなプロセスを経ることも。

というのも、ワニーがイメージしたアイデアをヴァスコ氏がプロトタイプにし、その後にデザイン画を描くこともあるのです。イル ビゾンテ創業当時からワニーの最大の理解者の一人である彼は、ワニーのイメージを瞬く間に具現化します。 それは、互いの技術を認める厚い友情と信頼の賜です。

彼らがこだわりぬいた職人技が、イル ビゾンテのより良い製品へとつながっているのです。